【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。

由希くんは俺の姿を見た途端、急に慌てて動きだす。そして必死に土を手ですくい、袋の中に戻そうとしだした。明らかに俺にみつかってしまったから動揺している。そんなふうに、手だけで戻そうとしていてもなかなか終わらないだろう。しかもなんか由希くん、泣きそうだ。由希くんの涙を見るのは、嫌だな――。

 とっさに思い浮かんだのは、俺の部屋のクローゼットにあった、小さいシャベルだった。それから、たしか綿谷家の物置に、畑用のシャベルがあったような気がするな、と。

 ふたつ準備した後は、話しかけるの緊張しているせいで、いつもよりも更に早くなる心臓を落ち着かせる。そして「これ、使ったらすくうの楽になるよ」と、心の中で話しかけながら由希くんに小さい方のシャベルを渡した。気まずさを感じたのか、思い切り目をそらされた。

 胸の真ん中辺りに深いダメージを受けたけれども、由希くんひとりじゃ大変そうだから、畑に土を入れる作業まで一緒にやった。

作業が終わり家の中に戻ると、そっとずっと俺は外を覗いていた。由希くんが無事に家の中に入るのを確認すると、ほっとする。それから、由希くんとの共同作業を、ひとつひとつ振り返った。由希くんの小さなシャベルで土をザクザクしている瞬間や頬についた土を払う仕草、必死な姿が可愛かったな。

――一緒に作業をする時間は、全てが幸せだった。

特に、最後にくれた「光田くん、すごいね。光田くんのお陰であっという間に駐車場が綺麗になった!」と、由希くんが言ってくれた言葉と微笑む表情が一番心に残り、しつこいくらいに何度も脳内に響き渡った。