僕の名前はワタル。何処にでもいる在り来たりな高校1年生だ。
帰宅部で趣味は本を読むこととオンラインゲームをすることである。
仲の良い友人の少年ケンイチの働いてるドーナツ屋で一度だけバイトをした事がある。
クビにされたのかと母や友人達から訊かれたが、理由は違う。
バイト時間を削ってまで僕はオンラインゲームの世界ににどっぷり浸かりたかったからだ。
オンラインゲームの主人公は勿論僕だ。
過干渉だった母から逃げるように僕は叔父さんから紹介してもらったゲームに夢中になった。
朝にはサンドイッチを食べ、昼にはオンラインゲームをやる長閑な休日。
その春、僕は亡くなった祖父の地下室へこっそり入り込むことにした。
母が言うようにこの地下室はかなり昔から存在してるらしい。
暗闇に包まれている空間をスマホのライトを便りに階段を下りる。
緊張気味に地下室の扉を開けると、部屋の周囲全体が紫水晶が視界に飛び込む。
紫水晶。
紫水晶の主に装飾用に使われる。熱や放射線によって黄色や緑に変色するらしい。
紫水晶に覆い尽くされた空間に例のそいつはいた。
僕の夢の中に出てきた紫色のボブカットの美少女はデスクの上でノートパソコンを開いている。
紫色のボブカットの美少女はデスクの上で素足を投げ出しながら、ノートパソコンを器用に弄っていた。
「あーあ。またか………。黄水晶星人の奴、地球に来やがって………」
 少女はダボダボのパーカーを着ている。
「あの………さっきからなんとか星人がどうって………」
 僕は紫色のボブカットの美少女に訊いてみる。
「は…………?」
 紫色のボブカットの少女はノーパソから目を離し、ようやく僕に気づく。
「ここ、僕のじいちゃんの地下室なんで。勝手に占拠したら不法占拠で捕まりますよ?」
「それね。ここ、私が見つけた秘密基地なんだ。我々、紫水晶星人は黄水晶星人から狙われてて、ようやく隠れ家を見つけられた」
 言ってる意味が全然理解出来ない。
 少女は連絡用のスピーカーに話しかける。
「もしもし?こちら、ヒトミ。ただいま、地球にて黄水晶星人について調査中」
『そうか。実にご苦労』
 少女は宇宙人らしい。宇宙人ってほら、タコみたいな奴想像してたけど。
 少女は連絡用のスピーカーを置いて、僕に小さいお茶の紙パックを渡す。
 どうやら機転がきく宇宙人らしい。
「さっきの説明だけど、私達、紫水晶星人は長い間黄水星星人と衝突してきた歴史があって。そんで私達紫水晶星人は自分達の故郷と家族と友人を守るべく、立ち上がったってこと」
 少女は紫色の綺麗な瞳を閉じながら言った。
「信じるか信じないかは君次第」
「取り敢えず、僕は信じます。貴女のお名前は?僕はワタルです」
 僕は紫色のボブカットの少女に聞く。
「私はヒトミ。紫水晶星人。さっきのは上層部のオッサンと連絡取ってた。よろしく、ワタル」
「よろしくお願いします、ヒトミさん」
 僕はヒトミのデスクの真上に取り付けられている大型のモニターを見つめる。
 どうやら衛星画像も見れるらしい。
 こうして僕とヒトミの奇妙な日々ははじまった。