最期の晩餐

「うーん……。裏切られたからって、すぐには嫌いになれないじゃん。別れたいって気持ちにはなってない。でもさ、元カノの頭を撫でる彼氏を見ちゃうとね……。元カノへの未練を見せられちゃうとね……。別れた方がいいのかなって……」

 さっきまで興奮気味に話していたくせに、急にトーンダウン。だって、別れたいわけじゃない。でも、元カノの方を向いている隼人の隣にいたら、今よりもっと辛い思いをするだろう。

「それは元カノへの未練じゃなくて、本当に単なる浮気な気がするけどな。だって、元カノに気持ちが傾いてたら、ななみんに『何でもない‼』なんて言い訳しないでしょ」

「そうだとしても、結局許せないから別れるしかないのかなと……」

 楠木さんに話を聞いてもらいながら、私の気持ちはどんどん別れを選択する方向へと傾く。

「【別れた方がいい】とかじゃなくて、別れたいのか別れたくないのか、どっち? いいか悪いかじゃなくて、したいかしたくないかで決めないと後悔すると思うよ」

 楠木さんが「こういうことは、頭で考えるんじゃなくて、気持ちで決めた方がいい」と私の目を見た。

「別れたくない。でも楠木さん、モヤモヤが残るってさっき言ってたじゃん‼ モヤモヤしたまま付き合えないよ‼」

「うん、言った。モヤモヤは絶対に残る。でも、そのモヤモヤって別れたくない気持ちより大きいの? ななみんの頭の中にはさ、【許して付き合い続ける】と【許せないから別れる】の二択だけなの?」

 親指と人差し指を折り曲げて質問してきた楠木さんが、

「【許せないけど別れない】って選択肢はないの?」

 中指も折り曲げて、三択にした。