最期の晩餐

「……ごめん。本当に食欲なくて……。さすがに今、これはちょっと無理。後で食べるから冷蔵庫に入れておいて」

 目の前に置かれた皿を見て、隼人が顔を歪めた。私がふたりの前にゴロッゴロの豚の角煮を置いたからだ。

「食べなくていい。たれを少し舐めてみて」

「…………」

 強引な私に、優しい隼人は『折角作ってきてくれたのに、断るのは失礼だ』と思ったのだろう。箸にほんのちょっとたれを絡め、口に入れた。

「……これ……。父さん、これ食べてみて。一口でいいから」

 目を見開いた隼人が、隼人のお父さんに無理矢理箸を握らせた。断る気力もない満身創痍の隼人のお父さんが、言われるがまま豚の角煮を口に運ぶ。

「……え。母さんの角煮……?」

 確かめるように、二口三口と食べ進める隼人のお父さん。

「母さんの角煮が、どうして……?」

 隼人のお父さんの目から涙が零れた。

「隼人のお母さんに『パフェのお礼がしたい』と言われて、『それなら隼人と隼人のお父さんが好きな料理の作り方を教えてください』ってお願いしたんです。そしたら『ふたりとも、私が作る豚の角煮が大好物なの』って、丁寧に教えてくださいました。良かった。ちゃんと再現出来てるみたいですね」

 隼人のお父さんに笑い掛ける。