最期の晩餐

「じゃあ、私はこの辺で失礼しますね。後は家族水入らずで楽しんでください」

 トレーに乗っていたパフェをテーブルに移し、隼人のお母さんの病室を出ようとすると、

「奈々未ちゃん、ありがとうね。美味しくいただきます」

 隼人のお母さんが両手を合わせて微笑んだ。

「どういたしまして。美味しく召し上がれ」

 ペコっと頭を下げて病室を後にする。ドアを閉めた後、病室から楽し気な笑い声が聞こえて来て、何だか心がほっこりした。

 隼人の家族には豪華パフェを提供したが、帰宅後に私が食べた夕食はというと、冷蔵庫の余りもので作ったチャーハンと、なけなしの野菜で作ったスープだった。「何、この違いは」と呟きながらも、自分の為に料理を頑張る気になれず、でも野菜はしっかり採っているから、管理栄養士的には合格‼ と、自分を過大評価しつつ、風呂上りに糖分と脂肪分たっぷりの、林田さんお手製のものとは全く違うアイスを喰らいながらテレビを見ていると、テーブルの上に無造作に置いていたスマホが震えた。ディスプレイの【隼人】の文字を確認し、電話に出る。

「もしもーし」

『何してた? 今、電話大丈夫?』

「うん。ちょっと怖くてカロリー確認出来てない、超甘ったるいアイスを、あとはもう寝るだけで消費する術もないのに食べてるだけだから、全然大丈夫」

『それは大丈夫なの?』

「イヤ、もう後の祭りだよね。食べちゃってるし」

『それは、大丈夫って開き直ってるだけじゃん』

「私の【大丈夫】は【電話OK】の大丈夫であって、体系維持問題への大丈夫じゃない」

『あ、なるほど』