最期の晩餐

「遂に明日ね、お待ちかねのオーダー食‼」

 オーダー食を翌日に控え、患者さんたちのリクエストを聞きまわっていた昼下がり、隼人のお母さんの病室に入ると、隼人のお母さんが「待ち遠しかったわー」と、拍手をしながら私を迎えてくれた。

「食べたいもの、もう決まっていそうですね」

 隼人のお母さんのリクエストを書き留めるべく、白衣のポケットからメモ帳とペンを取り出す。

「隼人が小さいの頃に家族で行った遊園地のパフェが食べたいの。どんなパフェだったか全然覚えてないんだけど、見れば思い出せる気がする。確か、その時の写真が家にあるはずだから、隼人に見せてもらって。あの遊園地で初めて隼人にパフェを食べさせたんだけど、あの子、目をキラキラさせて大喜びして……。遊園地自体も初めて連れて行った日だったから、重ね重ねの初体験に、隼人が大興奮でねー。可愛かったー。本当に楽しかった思い出。あ、隼人のことは、今も可愛い息子だと思ってるわよ。でももうあの頃の無邪気さはないじゃない? あったら逆に怖いし。パフェ食べながら、三人であの時の思い出話がしたいんだ」

 懐かしそうに目を細める隼人のお母さんの話を聞きながら【隼人が初めて遊園地に行った時のパフェ】とメモる。

 あぁ、良かった。写真があるなら見た目の再現はそう難しくなさそうだ。全く同じ味には出来ないだろうが、二十年も前に一度食べただけの味をしっかり覚えているとは思えず(だって、どんなパフェかも全然覚えてないわけだし)隼人のお母さんにとって重要なのは、【思い出のパフェを食べる】ことではなく、【パフェを食べながら思い出に浸る】ことなのだろう。

「任せてください‼ バッチリ再現しますから‼」

 胸に拳をぶつけ、高らかに宣言したというのに……。