最期の晩餐

「代われるものなら代わってやりたいよ‼ でも出来ないじゃないか‼ 俺は医者じゃないから病気を治すことは出来ないよ。祈ることと応援することしか出来ないよ。何も出来ないけど、母さんの命を諦められない」

 隼人のお父さんに、隼人のお母さんの気持ちは受け入れられない。

「……やっぱり離婚しましょう。夫婦でいるから依存してしまうのよ。私の中では二択なの。離婚せずに転院するか、離婚して転院するか」

 隼人のお母さんの気持ちは【ホスピスへ転院】で固まっているらしい。

「…………」

 再び蒸し返された離婚話に無言になってしまう隼人のお父さん。

隼人のお母さんのことが大好きな隼人のお父さんに、【離婚】という文字は相当堪えるらしい。

「……隼人は、どう思ってるの?」

 夫婦で大揉めしているけれど、息子である隼人の意見はどうなんだろう? と隼人に尋ねる。

「父さんの気持ちは凄く良く分かる。でも、俺は母さんの意見を尊重するべきだと思う。だって母さん、今までよく頑張ったもん。これ以上頑張れなんて……言えない」

 隼人が目に薄っすら涙を浮かべた。奥歯を噛みしめて涙を堪える隼人に、治療の壮絶さを思い知らされる。