最期の晩餐

「…………」

 私の質問に答えようとしない隼人のお父さん。

「お父さん、奈々未ちゃんに謝ってください。謝らないのなら離婚してください。奈々未ちゃんが他人だから口を挟むなと言うのなら、あなたとも他人になりますので、私の今後の人生に口出ししないでください。私は奈々未ちゃんにホスピスのことを色々聞きたいの。奈々未ちゃんとたくさんお話がしたいの。邪魔をするなら、あなたが家に帰ってください」

 目に余る隼人のお父さんの態度に、隼人のお母さんがとんでもないことを言い出した。

「離婚⁉」

 転院の話から離婚話にすり替わるという予想だにしなかった展開に、隼人のお父さんだけでなく、隼人も私も仰天。

「何を言い出しているんだ。ちょっと落ち着きなさい。他人様の前でみっともない話をするんじゃない」

大焦りの隼人のお父さん。まず、自分が落ち着けよ。と心の中でツッコむ。

「さっきから興奮しているのはあなたひとりですよ」

 隼人のお母さんの冷静な指摘。確かに彼女は、私が病室に入った時からずっと落ち着いていて、『落ち着け』などと言われる筋合いがない。

「母さんが勝手なことばかり言うからだろ‼ 離婚なんかしない‼ 母さんの癌は治る‼ 死なせたりしない‼ ホスピスに転院なんて、有り得ない‼」

 隼人のお母さんが煽るから、隼人のお父さんが激怒してしまった。