最期の晩餐

「病床に空きはあるので、転院は可能ですが……治療は本当にもう、いいんですか?」

 隼人のお母さんは十分理解しているとは思うが、ホスピスに入院するということは、病気の治療をしないということ。病気は絶対に治らないということだ。

「本当に、もういい」

「……そうですか。じゃあ、近いうちに転院の為の書類をお持ちしますね」

 隼人のお母さんの意思確認をして頷くと、

「もういいわけがないだろ‼ 部外者が首を突っ込むな‼ 母さんの病気は家族の問題だ‼ 癌を治さなかったら母さんは死んでしまうじゃないか‼ ホスピスなんか、ただ死を待つだけの場所じゃないか‼ お前は他人だから簡単にそんなことが言えるんだ‼ お前のホスピスの書類など持ってこなくていい‼ 今日はもう、帰ってくれないか」

 隼人のお父さんが私の肩を掴んで怒鳴った。

「やめろよ、父さん‼ ごめんな、奈々未」

 隼人がすぐさま、私から隼人のお父さんを引き剝がす。

「……ホスピス……なんか?」

 隼人が代わりに謝ってくれたが、時既に遅し。私の腹の奥底から怒りが沸々と湧き上がってくるのを感じた。

「ホスピスの患者さんが、全員絶望して入院しているとでも?」

 隼人のお父さんの暴言に、ホスピスの入院患者さん全員の顔が頭に浮かんで、みんなを侮辱されたような気がして、頭の方へどんどん血が上り、頭痛がしてきた。