最期の晩餐

「思ってない、思ってない‼ 誰も奈々未をそんな風に思ってないから‼ 父さんだって本当は奈々未のこと好きだから‼」

 隼人が首だけてなく両手も振りながら「違う違う」と、私を宥めようとしたが、

「好かれている気がしない‼」

 あんな言い方をされて、「あ、そうなのね。本当は私のことが好きなのね」となるはずがない。

「ごめんだけど、その話は一回置いとかない? 母さんの転院の話しようよ」

 隼人が「帰りに美味しいもの奢るから、臍曲げないで」と両手を擦り合わせた。

 確かに、隼人のお父さんと私の仲違いなど重要なことではない。隼人のお母さんの転院問題の方が遥かに大事だ。

「あの、隼人に私のどんな話を聞いたんですか?」

 入院中の人の前でギスギスするのは良くないなと反省し、話を戻す。

「奈々未ちゃんがいるホスピスって、週に一回患者さんが食べたいものを夕食でリスエスト出来るんでしょ? 患者さんの思い出の味を再現するために、奈々未ちゃんが凄く頑張ってるんだよって隼人から聞いたの。何かいいなって。奈々未ちゃんのホスピスのホームページを見てみたら、色んな行事も行われてて、凄く楽しそうで、そっちに移りたいなって思ったの」

 隼人のお母さんが、病気を治すことのないホスピスに目をキラキラと輝かせた。