最期の晩餐

「噛み出し食?」

「その名の通り、噛んだ後に飲み込まずに吐き出すの。ハンバーグの触感と味を楽しんだら、口から出せばいい。だから今まで通り、お母さんのハンバーグのリクエストOKだよ」

 人差し指と親指でOKサインを作ると、

「……え。それはダメなヤツでしょ。一昔前にユーチューバーがそれやって炎上してたやん」

 楠木さんが、私のOKサインのOの穴に自分の人差し指を突っ込んで横にスライドさせ、私の人差し指と親指の接着部分を剥がし、OKサインをCKサインにした。

「それは、たいして食べられもしないくせに大食いを装って、吐いてるところを編集でカットしなかったおバカさんだからでしょ。故意に食料を無駄にしたからでしょ。でも、楠木さんは違うじゃん。そんなおバカさんと同じ括りにしてくれるなよ」

 めげずに再び親指と人差し指をくっつけてOKサインを作り直す。

「……イヤ、でもなんか、バチ当たりそう。天国行けなそう。地獄に堕ちるとか絶対に嫌なんですけど」

 しかし、楠木さんは噛み出し食に難色を示し続けた。

「まぁ、やりたくないなら無理強いはしないけどさ。でも、『やっぱりどうしてもハンバーグを味わいたいな』って思ったら噛み出し食をして、後々そのことを神様か誰かに咎められたら、『倉橋奈々未にやらされました。アイツが「やれ‼」って言ったからやりました』って言えばいいよ」

 もし、楠木さんが本当は噛み出し食をやってみたいのに、罪悪感で出来ないのであれば、取り除いて気兼ねなくやって欲しいと思った。