最期の晩餐

「今度のオーダー食、ハンバーグのゼリーにする? ムースでもいいけど」

「イヤ、お母さんのハンバーグ以外のハンバーグは、食べなくていいや」

 楠木さんが胸の前で両腕をクロスさせ、×を作った。

「そうだよね。そこは拘るよね」

 右手で「失敬、失敬」と手刀を切る。

「あ。今、【食う気もないのに、何の興味だよ。かったりぃな】って思ったでしょ」

楠木さんが私の手刀を真剣白刃取りした。

「思ってないよ。揺るがないな。意思が強いなと……」

「いらないよ。接客業特有の無理矢理なポジティブ変換」

 楠木さんが「ククク」と笑った。

「ていうか、今更かったるいとか思うわけないじゃん。ウチラ調理隊が、楠木さんのお母さんのハンバーグを再現するのに、何回ダメだしくらったと思ってるのさ」

私も釣られて「ふふふ」と声を出して笑ってしまった。

実際、ダメだしを受けたのは私以外の三人であって、入社したての私は一度もくらってないけれど。

「あのさ。もし、固形物を飲み込むのがキツイだけで、口に入れるのは問題ないのなら、噛み出し食にすればいいよ」

 やっぱり楠木さんにお母さんのハンバーグを食べて欲しくて、噛み出し食を勧める。