最期の晩餐

「ちゃんと岡村さんに詳しく聞いて来い、ばかやろう」

 林田さんには「出直して来い」と顎で追い払われるし。

 岡村さん自身もよく覚えていない料理を、本人にこれ以上どう詳しく聞けと言うんだ。

 ネットで調べてもヒットしない新潟の煮しめに頭を抱えながら、とりあえず喉でも潤そうかと自販機に行くと、

「お? どうした? 難しい顔して」

 自販機の近くのベンチでココアを飲んでいた楠木さんに出くわした。

「何にも考えてなさそうで、私も考え事くらいするんですよ。ココア、美味しそうですね。真似っこしちゃおう」

 自販機のボタンを押し、ココアを取るべく、しゃがみこんで取り出し口に手を突っ込む。

「悩み事? 暇だし、聞くよ」

「……うーん。大丈夫。何とかする」

 ココアのプルタブを開けながら『何ともなる気がしなけど』と心の中で呟く。

「病人だから、頼りにならないってか」

 楠木さんが「フッ」と不快感を滲ませた顔をしながら笑った。

「イヤ、そうじゃなくて。楠木さんって、お金をお支払い頂いて入院してもらってるわけで、患者さんでもあるけど、私たちにとってはお客様でもあるわけですよ。お客様に仕事の悩みを聞かせるってどうなのかなと思って」

 首を左右に振って楠木さんの言葉を否定すると、

「客が聞きたいって言ってるんだから話せ」

 楠木さんが、今度は意地悪っ子の顔をして笑った。