最期の晩餐

「何の逆なの。でも、そうかもしれないね。忙しいお母さまだったんだもの。市販のものを使うなんて当然のことよね」

 主婦である森山さんは納得がいく様子。

「ウチも普通に使ってましたよ。市販のものをバカにされると、ウチの母親を否定された気がして嫌なのでやめてください。今回は奈々未の案で行ってみましょう」

 美知さんも賛同し、賛成過半数で奈々未案(本当は隼人案)は可決された。

 そして夕食時、立案者として責任をもって、奈々未案のハンバーグを楠木さんへ配膳しに行く。

「どれどれ、今回のハンバーグは成功ですかね?」

 楠木さんがテーブルに置かれたハンバーグを覗き込んだ。

「今までを失敗みたいに言いなさんな。味が希望と違っただけで美味しかったでしょうが」

 ツッコミを入れると、楠木さんが「ははは」と笑った。

「では、実食しましょうかね。いただきます」

 丁寧に手を合わせた楠木さんが、箸でハンバーグを一口大に切り、口へ運んだ。

「…………」

 ゆっくりとじっくりと咀嚼する楠木さん。

「……どうですか?」

 楠木さんの反応を伺う。

「……お母さんのハンバーグが食べられるまで絶対に死なない。死んでたまるかって思ってたの。……明日死んだらどうしてくれるのよ」

 楠木さんが「すっごく美味しい」と言いながら泣いた。