最期の晩餐

「母親に似て、気が利くヤツなんだよ、ウチの息子は」

 林田さんが得意気に胸を張った。

「まぁ、それもそうなんですけど、お嫁さんが素晴らしいって話ですよ。こんな堅物な林田さんとの旅行を快諾するなんて。出来た嫁ですよ」

 馬鹿な私は、森山さんの気遣いをアッサリ無碍にする。

「よーしよーし、お前は絶対に食うな。お土産返せ、このやろう‼」

 林田さんが土産袋を取り上げようとするから、

「やめろ‼ 渡すものか‼」

 取られてたまるかと抱きかかえる。

「ふたりとも‼ そんなことより、楠木さんのハンバーグ‼」

 美知さんが『いい加減にしろ』とばかりに大声で林田さんと私のやり取りを遮った。

「楠木さんのオーダー食のリクエスト、またハンバーグかぁ」

 林田さんが「参ったなぁ」と頭を掻いた。

「これで三回目?」

 森山さんが尋ねると、美知さんが「はい」と項垂れた。

「楠木さんって、ハンバーグ好きなんですね。若いから、やっぱ肉なんでしょうね」

 楠木さんは私と同じ二十六歳の女性患者さんだ。

「楠木さんのリクエストは、正確には【お母さんのハンバーグ】なのよ」

 森山さんが「ふぅ」と小さく息を吐いた。