最期の晩餐

「イヤ、そうじゃなくて。私、速攻で稟議書作って院長にクックチル導入してもらうので、

家族旅行を断念するんじゃなくて、延期にしてもらえませんか? クックチルが入れば時間に余裕が出来ます。気兼ねなく有休を取って頂けます。行ってきてくださいよ、家族旅行」

「嬉しいな。ありがとう。旦那に電話してみるね。よーし‼ なんかやる気出てきた‼ 張り切って鯖買ってくるね‼ 行ってきまーす‼」

 森山さんはいつも以上にニッコニコな笑顔を振りまいて、スキップをしながら買い物に出かけて行った。

 その日に出した鯖の味噌煮を、下川さんは綺麗に平らげてくれ、『とても美味しかったです。ありがとう』と書かれた手紙を返却トレーに添えてくれた。その手紙を林田さんに渡すと、目に涙を溜めて喜んでいたので、『何て美しい男泣きなのでしょう』と胸を打たれながらそっとハンカチを差し出してみたら、「泣いてねぇわ」と弾きとばされ、こっちが泣きそうになっているのに、美知さんと森山さんには「調子に乗って余計なことしすぎ」「林田さんとそんなに簡単に打ち解けられるわけないじゃない」と笑われた。

 クックチルはというと、すんなり稟議は通り、すぐに導入された。