最期の晩餐

「……クックチル、入れるか」

 必死な私の姿を見て、林田さんも笑い出してしまった。

「……下川さんの体調、今日は良かったのなら、夕食に鯖の味噌煮を追加出来ないか? ルール違反だろうけど。でも、来週のオーダー食の日に体調が良いとは限らないし。昨日食べられたのにそのチャンスを奪ってしまって申し訳ない」

 林田さんのクックチル容認は、私の熱弁の力ではなく、下川さんへの懺悔の気持ちから

だったらしく、急に真面目な顔で相談してきた。

「それ、凄く良いと思います。ここはホスピスです。何でもアリではないけれど、柔軟に

やりましょう。患者さんが喜ぶことをしましょう‼」

 美知さんが林田さんに親指を立てたので、

「ナイスアイデアです、林田さん‼」

 私も便乗して両手の親指を立てると、

「じゃあ、急いで近所のスーパーに鯖を買いに行ってきますね。主婦の厳しい目で一番新鮮な鯖をゲットしてくるわ‼」

 森山さんは親指を立てながら調理場を出て行った。

「あぁ‼ ちょっと待って‼ 森山さん‼」

 慌てて森山さんの後を追う。

「森山さん、森山さん‼」

 職員玄関に向かう森山さんを呼び止めると、

「何か追加で必要なものあった?」

 森山さんが足を止め、クルリと振り返った。