最期の晩餐

『そんなことないよ。サブ本題』

「それ、本題とは言わない」

『具合悪くて心細いからって、無駄話で話を長引かせないでくれるかな。私、残業中って言ったでしょ。仕事中‼』

 来てもらえないなら、ちょっとでも長く電話をしていたいなどという下心を、美知さんはあっさり見透かした。というか、単に私が邪魔だったのだろう。そりゃそうだ。残業なんかさっさと片付けて帰りたいに決まっている。

「ごめんなさーい。で、本題とは?」

『今日ね、奈々未が帰った後に楠木さんの親戚の方がいらしたのよ。楠木さん、奈々未に手紙を残してくれててね、それを持って来て下さったの』

「行きます‼ やっぱり明日、出社します‼ ていうか、今から行きます‼」

 亡くなってしまった友だちの、顔は見れずとも声は聞けずとも、文字に触れられるなんて‼ と、感激のあまり居ても立ってもいられない。

 スッピンだけど、まぁいいか。マスクしてしまえばいい。そもそも私の顔など誰も興味ないだろう。着替えは……しなきゃだよな。さすがにスウェットはないわな。と、スマホを頬と肩で挟みながら、まずズボンを脱ぎ捨てていると、

『だから、来るなって言ってるでしょうが。来たところでもうここにはない』

「え⁉ どうして⁉ まさか、捨てたりしてないですよね⁉」

 パンツ一丁で美知さんにキレる。