最期の晩餐

「イカンイカン‼ ストレス溜めない‼ 考えない‼」

 頭を左右に振って、隼人の顔を脳内から打ち消した。

 サクっとお風呂を済ませ、ドライヤーでワシワシと、丁寧とは程遠いやり方で髪を乾かすと、

「ふぅー」

 自分のベッドにダイブ。もう、私が今日しなければならないことは何もない。

「恋しかったよ、マイ枕」

 愛用の枕に顔を埋める。

「…………うぅ……」

 誰もいない部屋にひとり。腹痛から解放され、心に余裕が出来ると、頭の中は楠木さんでいっぱいになる。

 楠木さんに訊いて欲しいことがたくさんあった。楠木さんの話だっていっぱい聞きたかった。

「……会いたいよー。楠木さん」

 あっという間に枕が涙でびしょびしょになった。

 ケツの穴が水分を出すのをやめたら、今度は目かよ。と、自分でも呆れるが、止まらない。今日はもう、誰とも会う予定がないから、無理に泣き止む必要もないが、点滴中に爆睡してしまったせいで、全く眠くない。私は夜通し泣く羽目になるのだろうか。

「泣きすぎて瞼の皮むけて血が出たら、楠木さんのせいだからな‼」

 悪態をついたところで、当然楠木さんの返事はない。あっても怖い。『幽霊になって出て来ちゃいましたー』と、勝手に私の部屋に上がりこまれても困る。でも、

「何か言ってよ」

 やっぱり楠木さんの声が聞きたい。完全なる矛盾。