「楠木さんの病室に行ってもいないよ。昨日のうちに、楠木さんの親戚の方が迎えに来られえたから」
美知さんが言い聞かせるように「楠木さんは、もうここには居ないんだよ」と私の目を見た。
「そんな……」
そんなの嘘だ。楠木さんが死ぬわけない……わけない。楠木さん余命が長くないことは最初から分かっていたはずなのに、楠木さんと話をするのが楽しくて、一緒にいるのが心地よくて、『また明日ね』なんて無神経に挨拶が出来てしまっていたほどに、楠木さんの残りの時間を意識していなかった。違う。楠木さんが死んでしまうことを受け入れたくんなくて、意識するのを辞めたんだ。
この仕事を始めてから、何人かの患者さんを見送った。だから、心の準備などしなくとも自分は大丈夫だと思っていた。全然大丈夫じゃない。思い違いもいいところだ。
今まで、患者さんに優劣をつけたり、依怙贔屓をしたことはない。だから、楠木さんを特別扱いしたりもしなかった。なのに、なんで他の患者さんの時みたいに、心静かに偲ぶことが出来ないのだろう。友だちになってしまったからなのか?
「取り乱してすみません。仕事しましょう」
無理矢理気持ちを立て直す。ここで崩れてしまったら、『今後は患者さんと距離を置いて接するように』と注意を受けそうな気がしたから。楠木さんと友だちになったことが、間違いだったかのように言われたくなかった。
美知さんが言い聞かせるように「楠木さんは、もうここには居ないんだよ」と私の目を見た。
「そんな……」
そんなの嘘だ。楠木さんが死ぬわけない……わけない。楠木さん余命が長くないことは最初から分かっていたはずなのに、楠木さんと話をするのが楽しくて、一緒にいるのが心地よくて、『また明日ね』なんて無神経に挨拶が出来てしまっていたほどに、楠木さんの残りの時間を意識していなかった。違う。楠木さんが死んでしまうことを受け入れたくんなくて、意識するのを辞めたんだ。
この仕事を始めてから、何人かの患者さんを見送った。だから、心の準備などしなくとも自分は大丈夫だと思っていた。全然大丈夫じゃない。思い違いもいいところだ。
今まで、患者さんに優劣をつけたり、依怙贔屓をしたことはない。だから、楠木さんを特別扱いしたりもしなかった。なのに、なんで他の患者さんの時みたいに、心静かに偲ぶことが出来ないのだろう。友だちになってしまったからなのか?
「取り乱してすみません。仕事しましょう」
無理矢理気持ちを立て直す。ここで崩れてしまったら、『今後は患者さんと距離を置いて接するように』と注意を受けそうな気がしたから。楠木さんと友だちになったことが、間違いだったかのように言われたくなかった。



