最期の晩餐

「体調悪い? 食欲ない? 大丈夫?」

 心配になり、楠木さんの顔を覗き込むと、

「ななみんがいると食べられない」

 楠木さんは、私の額に手を置いて押し、私の顔を遠ざけた。

「えぇー。何でよー」

「友だちに食べ物を吐き出してるところなんか見られたくないよ‼ 分かるでしょ?」

 ぷくっとほっぺたを膨らませる楠木さん。

「イヤでもさ、喉詰まらせたりしないか確認しないと。私の前だと食べ辛いなら、看護師さん呼んでくるよ。ごめんね、気が利かなくて」

 手の空いている看護師さんを捕まえようと、病室を出ようとする私を、

「そんなに仲良くもない看護師さんにじっと見られるのもちょっと……。気まずいじゃん」

 楠木さんが引き留めた。

「えぇー。じゃあ、食べられないじゃん」

「イヤ、食べる。食べたいもん。だからさ、吐き出す時だけ後ろ向くとかしてくれない?」

 恥ずかしそうにモジモジする楠木さんが、なんか可愛かった。

「うん。分かったよ」

 楠木さんに頷くと、

「それじゃあ、いただきます」

 楠木さんは合掌した後、右手に箸を持った。

 久々の一般食を口にする楠木さんの姿を、固唾を呑んで見守る。