最期の晩餐

 そして翌日。昼食を食べ終わると、オーダー食の調理に追われる。

「ハイ‼ 楠木さんのハンバーグは私が作ります‼」

 右手を高らかに挙げ、楠木さんのハンバーグ作りを立候補すると、

「じゃあ、頼むー」

 市販のハンバーグの素を使い、自分の腕の見せ所がない料理の為か、林田さんはアッサリ譲ってくれた。

「俺が作るより、お前が作った方が楠木さんも喜ぶだろ。楠木さんがまた食べる気になってくれたハンバーグだからな、市販の素を使うからって手を抜くなよ」

 林田さんは、私の低俗な勘繰りとは違う理由で譲ってくれたらしい。

「ハイ‼ 頑張ります‼」

 猛省しながら返事をして、他の患者さんのオーダー食も一所懸命丁寧に作りながら、楠木さんのハンバーグを調理した。

 夕食の時間になり、出来上がったハンバーグと噛み出し用の袋をトレ―に乗せ、楠木さんの部屋にサーブしに行く。

「失礼しまーす。夕食でーす」

 ノックをして中に入ると、

「うわー‼ いい匂い‼」

 ハンバーグを見た楠木さんが、目を輝かせながら拍手をした。

「でしょ? 私が腕に縒りを掛けて作りました‼ はい、どうぞ」

 テーブルにハンバーグをセットするが、

「…………」

 楠木さんはハンバーグを見つめたまま食べようとしない。