最期の晩餐

「もし明日、私の具合が悪くなって噛み出し食が出来なかったら行かないつもり?」

 楠木さんが、先延ばしを決め込む私を白い目で見た。

「イヤ、行く。楠木さんを出しに使ってゴメン。どうしても今日行きたくなくて……。明日行くなら、楠木さんの顔を見てから行きたいなと思ってさ。楠木さんの顔を見るとさ、『よし‼ やってやろう‼』って気が沸いてくるからさ」

「なってないやん。そんな気が沸いてるなら、今日行くでしょ、普通」

 私の言い訳に、白い目どころか白目を剥く楠木さん。

「普通とかどうでもいいよ。頭の整理がつかないから無理だって言ったじゃん。今日行かないのは私の頭の問題‼」

「うわー。さっきの私の言葉、引用しやがったー」

 楠木さんが黒目を所定の位置に戻して笑った。

「よし‼ じゃあ、頭の整理でもしに帰るかな。長居してすみませんでしたー」

 楠木さんの笑顔も見れたし、楠木さんに相談出来たおかげで私の気持ちも落ち着いたしで、そろそろお暇しようかと椅子から立ち上がる。

「おやすみ、ななみん。また明日ね」

「うん。今日は本当にありがとうね。おやすみなさい。また明日」

 お互い笑顔で手を振り合うと、楠木さんの病室を出た。

 鞄からスマホを出し、画面を確認すると、隼人からの着信とLINEが来ていた。

【話がしたい。会いたい】のメッセージに【明日会おう。私も話がしたい】と返信してスマホをポケットに突っ込むと、明日はどう話を切り出そうか? と考えながら歩いた。