夜、初めて眠れなかった日。

チクタクと進む針の音。

時刻は十二時を回っている。

(私はお父さんとお母さんが褒めてくれるから大丈夫。)

何か心に引っ掛かっていた。

心の中がモヤモヤとしていた。

すると、階段を上る足音が。

そしてガチャッと私の部屋のドアが音を鳴らす。

寝たフリをしながら微かに目を開けるとお母さんが覗いていた。

私が寝たのを確認したのか、ドアを閉じる。

ふうっと安堵の息を吐いたのもつかの間。

いきなり下から怒鳴り声がした。

「ーー!!ーー!!」

「ーー!ーーー!!!」

お父さんとお母さんの声。

遠くて何を言っているのか分からない。

怒鳴り声自体、耳を澄まさないと聞こえない。

今までずっと夜に喧嘩、してたのかな…。

声の音量からして気が付かなくてもおかしくない。

気になってベッドから起き上がって部屋のドアを少し開けた。

「あの子が居るから離婚できないじゃない!」

「お前もアイツも邪魔だ。」

「あんな子産むんじゃなかった。

貴方と結婚するんじゃなかった。」

「え…う、そ。」

私は一瞬耳を疑った。

一歩、二歩と後ろに下がり尻もちを着く。

私はすぐに起き上がり階段を駆け下りた。

(嘘だ…!嘘っ!!)

信じたくなかった。

滲む涙。

本当はもう分かっていたのに。

だって、褒めてくれる時いつも同じだった。

いつも、お父さんもお母さんも微笑む、だけ。

親から名前を呼ばれることなんて

ほとんどなかった。

愛情への違和感はもう分かっていた。

それでも、友達に先生に見捨てられた私は…。

少しでも期待してしまう。

『大好きだよ。』

そう言って欲しかった。