「アンタなんてー」

お母さんがそう言いながら私の髪を引っ張る。

聞き飽きた言葉に、慣れた痛み。

虐待。
そんなことは分かっている。

でも訴える気にもなれず三年が経過。

「産まなければ良かった、消えてよ。」

今日も何も感じない。

期待をしないから怖くない、哀しくない。

だから痛みも感じない。

抵抗もせず聞き流していた時、
ふと、テレビが目に入った。

鳴り響く歓声。

ステージ上で笑顔で手を振る姿を見て。

心を打たれた。

画面越しでも伝わってくる希望。

私の瞳に光が射し込む。

画面越しの彼には色が付いていた。

「…き、れい。」

久しぶりに発した言葉は、酷く震えていて
お母さんの声にかき消された。