「瑠々〜!今日お昼どうすんの?私たち、購買でパン買おっかな、って」
「私は、お弁当だよ。どっかで食べるね」
 そっか〜、じゃ、またあとでね、と去って行く2人。
 私は1人、中庭に向かって歩く。
 今日もまた、1人だった。
 この前、一度だけお弁当を忘れた時に、購買で買って、一緒き食べたんだけど。
 それ以来、全然一緒に食べていない。
 いつか一緒に食べたいな。
 ・・・というか、来年からは、全員給食になるらしいから、来年からは、あんまり気にしなくてもいいんだけど。
「いただきます」
 このお弁当、ユウ姉が作ったんだろうな。
 ・・・羨ましい。
 こんなしっかりしてて、料理も上手くて。
 ・・・あんなことは、あったけれど。
 でも、ちゃんと生きてて・・・。
 ・・・本当に羨ましいな。
 ずるいな。
 私なんか、ずっと"あのこと"引きずってるのに。
 ユウ姉が、羨ましいよ……。
「はあ……」
 と、ふいにそんなため息が聞こえた。
「え?」
 振り向くと、あの沈んだ顔の男の子がいた。
 どうしたんだろう。
 今にも泣きだしそうだ。
「あの!大丈夫、ですか?」
 こちらを振り向く。
 意外に整った顔だった。
「だれ……」
 今にも消えてしまいそうな声で呟く、彼。
「私は、水月。水月 瑠々。そっちは?」
「……龍王。龍王 透真」
 りゅうおう、とうま、と名乗った彼は、ずっと俯いていた。
「何組?」
「さん、くみ」
 やっぱりね。
「私は、6組、です」
 ヤバイ、会話が続かない。
「ねえ、なにか、あ」
「僕のこと、なにも知らないの?」
 龍王くんは、私の言葉を遮った。
「僕とは関わらないほうがいいよ」
 そう言うと、龍王くんは、中庭を後にする。
 なんなんだろう、あの子。
 ただ、一つだけ、分かったことがある。

  あの子の背中は、愛美に、似てる――。