「突然連絡がきて、"話がある"と言われて会いました。姉は歯科医をしているんですけど、何かと思ったら"うちの歯科衛生士の子、紹介してあげる!"って、見合い話を持ってきたんです。"もう30手前なんだから、そろそろ結婚考えなさい!"とか余計な心配をしてきて。」
優木くんはそう言って、苦笑いを浮かべた。
「それで、その、、、お見合いは?」
「もちろん、断りましたよ。"今、好きな人がいるから"って。」
わたしは優木くんの言葉にホッとした。
それと共になぜか涙が溢れてきた。
何これ、、、何の涙なの?
わたしが慌てて涙を拭っていると、優木くんは「前もって彼女に話しておけば良かったですね。姉と会うこと。そしたら、、、そんな誤解もされずに済んだのに、、、彼女を傷付けてしまった、、、」と後悔の念を感じる口調で言い、俯いた。
しばらくわたしたちの間には沈黙が流れ、その沈黙を破ったのは優木くんの方だった。
「俺に、、、チャンスはまだありますか?彼女からの信頼を失ってしまったかもしれないけど、俺は、、、春束がいい。春束じゃないと、、、ダメなんだ。」
「、、、優木くん。」
「俺は、春束と一緒に居る時が一番楽しいんだ。春束が笑っている姿、熱く語っている姿、俺の話を真剣に聞いてくれている時の姿、、、全てを愛おしく感じる。」
わたしは涙を流し続けながら、優木くんの言葉に耳を傾け続けていた。
すると、優木くんは真っ直ぐにわたしを見ると、真剣な表情で言った。
「春束、好きです。俺と付き合ってください。」
わたしは優木くんの告白に涙を流しながら微笑むと「はい、宜しくお願いします。」と言った。
そしてわたしたちは同時に席を立つと、お互いに歩み寄り、抱き締めあったのだった。



