「最初はさ、男として情けないって落ち込んだよ。でも、どう頑張ったってどうにもならなくて、、、今は、何とか今の自分を受け入れられるようにはなってきた。」
優木くんはそう言うと、ワインを一口飲んだ。
「で、春束は?何で彼氏つくらないの?」
「わたしは、、、まぁ、仕事柄出会いがないってのもあるけど、何か、、、恋愛とか結婚って、する必要があるのかなぁ〜って思っちゃって。」
わたしがそう言うと、優木くんは「そう思うきっかけがあったの?」と訊いた。
「まぁ、占い師の仕事をしてるとさ、ほとんどが恋愛相談で、、、その恋愛相談の三分の二は不倫や浮気の相談なんだよね。されてる側じゃなくて、してる側の。」
「えっ?!マジ?!」
「うん、、、妻子持ちの既婚者と付き合ってるんですけど、彼は離婚してわたしのところに来てくれるんでしょうか?とか。彼氏の他に好きな人が出来たんですけど、どちらを選ぶべきでしょうか?とか。」
わたしの話に驚く優木くんは、「何か、、、不誠実な世界だなぁ。」と呟いた。
「もちろん、そうゆう人ばかりじゃなくて、好きな人が自分のことを思ってるのか?とかピュアな相談もあるんだよ?でも、大半は不倫、浮気相談、、、心の中では"そんなのやめなよ"って思っても、仕事だからさ、、、話を聞いてアドバイスはしてるけど、何かわたしまで悪者になった気分になっちゃうよね。」
わたしはそう言って、ワインを口にした。
「だから、そんな人ばかりの世界なら、人を好きになっても裏切られるだけ、、、大切な人に裏切られることほどツラいものはない、それなら最初から恋愛なんてしなければいいんだって思って。だから、彼氏はつくらないの。」
「なるほどなぁ、、、。そんな相談ばっかり乗ってたら、そう思っても仕方ないよなぁ。」
ラグの上で胡座をかき座る優木くんは、テーブルに頬杖をつくと宙を見上げた。
「何かさ、俺たちって似た者同士だな。」
「えっ?」
「秘密を共有した者同士で、秘密同盟、的な?」
優木くんの言葉にわたしは笑うと「秘密同盟かぁ。そうだね!」と言った。
「俺、春束となら、、、上手くいきそうな気がする。」
「わたし?」
「うん、、、突然だけどさぁ、、、俺たち、交際前提で友達から始めてみない?」
「え!わたしが?!優木くんと?!」
「無理にとは言わないよ。春束が嫌なら、俺は諦めるから。」
そう言う優木くんの瞳は真っ直ぐで、でも表情は穏やかだった。
わたしが、優木くんと交際前提で友達から始める?
何だか信じられない、、、
でも不思議と、わたしに迷いはなかった。
「じゃあ、お友達から、、、宜しくお願いします。」



