「あ、ごめん。嫌なこと思い出させちゃったかな、、、」
わたしがそう言うと、優木くんは柔らかい表情で首を横に振り「いや、大丈夫だよ。」と言った。
「俺、研修医時代に付き合ってた彼女が居たんだけど、、、浮気されちゃってさ。まぁ、なかなか相手をしてあげられなかった俺が悪いから。」
「何で優木くんが悪いの?浮気した方が悪いでしょ。」
わたしが怒りが混じった強い口調でそう言うと、優木くんは切なげに「、、、春束が占い師だって秘密を俺に打ち明けてくれたから、じゃあ俺も、、、俺の秘密、打ち明けようかな。」と言った。
「優木くんの、秘密?」
わたしが恐る恐るそう訊くと、優木くんは切り分けたチキンをわたしのお皿に移しながら教えてくれた。
「俺、、、EDなんだ。」
優木くんからの意外すぎる告白に、わたしは言葉を失った。
ED、、、意味は、分かってる。
けど、何て言ったらいいのか、、、何て声を掛けたらいいのか、、、
わたしの頭では、何の言葉も思いつかなかった。
「意味は、分かる?」
「うん、、、何となくは。」
「こんなこと急に言われても、困るよな。ごめん。」
「ううん!全然いいの!ただ、、、優木くんに何て言ったらいいのか、分からなくて、、、。男性にしか分からない、ツラさだと思うから、女のわたしが何を言うのが正解なのかなって、、、」
わたしがそう言うと、優木くんは優しく微笑み「春束は、本当に人の気持ちを考えながら話してくれるよな。」と言った。
「、、、まぁ、だから、夜の営みってやつ?あれが、俺には無理でさ、、、。それで彼女に浮気されて別れた。それから彼女は作ってない。彼女が出来れば、自然とそうゆう流れになるし、この歳になると結婚も視野に入ってきて、結婚の先には"子ども"を求められる。今の俺には、無理な話だから、、、だから彼女はつくらないんだ。」
優木くんがそんなツラい悩みを持っていただなんて、、、
全く想像出来なかった。
優木くんはわたしに気を使い「ほら!チキン冷めちゃうから、温かいうちに食べなよ!」と明るく振る舞ってくれた。



