すると、キッチンに入って行った優木くんが冷蔵庫を開け、何やら食材を出し始めた。
わたしはソファーに腰を掛けるのをやめると、キッチンに入り、優木くんの隣まで歩み寄って行った。
「何か作るの?」
「うん。アヒージョと、あとはチキンをグリルで焼こうと思って。」
「いいねぇ!優木くんって、料理まで出来るの?!」
「いや、元々は全然料理なんてしたことなかったんだけど、生活習慣の改善の為に少しずつ料理をするようにしてるって感じかな。」
「生活習慣の改善かぁ。偉いなぁ〜。わたしなんて仕事で疲れて、料理する気になんてなかなか無れないよ。」
わたしがそう言うと、優木くんは「まぁ、そうだよな。春束は人の悩み相談に乗る仕事だから、かなりエネルギー消費するだろ?」と言った。
「まぁね、、、土日は特に忙しいから、グッタリだよ。」
「春束はさ、何で占い師になろうと思ったの?」
優木くんはチキンにハーブソルトをふりかけ、味付けをしながら言った。
「んー、元々は普通に事務員として働いてたんだけど、、、なんか仕事が楽しいと思えなくてさ。やり甲斐があったわけじゃないし、このままでいいのかなって悩んでた時に、よく真佳から相談を受けてて、、、わたし、自分の悩みは人に話したりしないんだけど、人から悩み相談を受けることが多くて、それが別に嫌ではなかったんだよね。そこから、心理カウンセラーの資格を取ることも考えたんだけど、心理カウンセラーって、心理学的なことからカウンセリングするじゃない?それがわたしはしっくりこなくて、、、」
わたしがそう言うと、優木くんは「しっくりこない、とは?」と言った。
「人の悩みや心理、性格、考えって十人十色で、心理学で解決出来るものじゃないんじゃないかって思って。あ、心理カウンセラーを否定してるわけじゃないんだけど、わたしはその人にはその人に合ったアドバイスがしたくてさ。その時にタロットカードを使うのはどうだろう、って思ったの。元々占いに興味があってタロットカードを持ってたから、友達とかの悩み相談を受けた時にタロットカードを使ってアドバイスしたら、あとから"咲弥のアドバイス通りにしたら上手くいった!"って喜んでもらえて、それが凄く嬉しくて、、、それがきっかけで今に至る感じ。」
わたしの話を聞きながら料理を進めていた優木くんは、「へぇ〜、凄いなぁ。人の幸せを願う仕事、、、ってことだろ?誰にでも出来ることじゃないよ。」と言い、味付けされたチキンをオーブンの中へと入れ、時間を設定した。



