『レンさん本当にいいんですか?』
1着ですら申し訳ないのに10着なんて……
「いいから、気にすんな」
『でも悪いです。なにかお礼させてください』
流石にわたしもここは退けない。
洋服を返すのは現実的じゃないから、なにか別でお礼がしたい。
「10月14日はあの黒のワンピースを着ろ」
『黒のワンピースですか?』
それは、1着目に試着した黒の大人っぽいマーメイドラインの上品なワンピース。
服を着ることがお礼になるなんて思えなくて、でもレンさんの喜ぶことが分からず何度もお礼をしたいと伝えたけど……
「それ以外の服は俺の家に置いておく」
『……それって…』
「いつでも着替えられるようにしといた方がいいだろ?」
『…はい!』
なんだかレンさんに上手く丸め込まれた気がする。
なんとその後は美容室へ向かいヘアセットにメイクまでして貰った。
「とっても素敵です、流石クロサキ様の彼女さんですね」
なんて美容師さんに言われたけど、恐れ多くてしっかり否定しておいた。
そんな謙遜なさらないでくださいってあまり聞いて貰えなかったけど……。
