【完】オキナグサに愛を込めて



それは、ヒロくんが怖くて泣いた日だ。

「泣いてるエマちゃんをホシミヤが抱きしめてた。俺は確信した。エマちゃんの心はホシミヤの物だって。エマちゃんはお前のこと嫌いになったんじゃねぇのか?」


『イズミくんやめて!』


助けに来てくれたレンさんに少しだけ期待してしまった。
わたしの気持ちはまだレンさんを思ってる。
だから、レンさんに変に勘違いして欲しくなかった……。


それなのに、イズミくんはわたしの声なんて聞こえていないように話し続けた。


「クロサキはエマちゃんに捨てられたのになぜ助けに来た?」


……わたしがレンさんを捨てた。
やっぱり皆からみたらそう見えるよね……。

この話を聞いたレンさんもきっとそう思ってるはず……。


「そんなのエマが決めたことだ、俺には関係ねぇ。……ただイズミ、おめぇだけは死んでも許さねぇ」


レンさんの冷たい声にゾッとした。


……それと同時にレンさんの拳がイズミくんの頬に入った。


殴られた衝撃で部屋の壁に背中をぶつけるイズミくん。

そこへゆっくりと近づき、1発、さらにもう1発と殴る手を止めないレンさん。


『……レン…さん……』


すでに意識が無くなっているイズミくんをレンさんは殴り続けた。


そして、わたしはその光景に動けなくなってしまった。