ヒロくんが迎えに来るようになって1週間。
それは、空き教室へ行かなくなって1週間でもあった。

今はお昼休み。
先生に呼ばれた帰り、シホが待つ教室を目指しているとある男に呼び止められた。

「エマちゃん」

『……はい?』

見たことない人。
柔らかいブラウンの髪に、着崩した制服。そして、首から微かにみえる蛇のタトゥー。


『久しぶりだね』

……わたしこの人に会ったことあったかな?

「すみません、わたしどこかで会いましたか?」

『悲しいなぁ、1回会ったことあるんだけどな』


わたしが会ったことあるとしたら……

『黒龍の方ですか?』

「そんな感じ」

『そうなんですね、ごめんなさいわたし貴方のこと分からなくて……』

「いいよ、俺イズミ。よろしくね」

『イズミさん?』

下の名前を教えてくれるなんて距離感が近い人だな……。

「さんなんていらないよ、同い年だし」

……この人が同い歳?
とても見えない。大人の余裕を感じるほど落ち着いてる。

『では、イズミくん。よろしく…です』

「敬語もいらねぇよ」

『……うん』

「じゃあ、またねーエマちゃん」


何だったんだろう。
嵐のように去っていったイズミくん。

でも少し嬉しかった。
黒龍との関係はもう終わったと思ってたのに声を掛けてくれるなんて。