普段は優しくてわたしに怒ることがないヒロくんが怒っている姿をみていたら自然と涙が零れてきた。
ポロポロと流れる涙は止まることを知らない。
今日は何回泣くんだろう。
レンさんの前だと必死に堪えた涙もヒロくんの前だと不思議と溢れてきた。
「エマ、悪かった」
視界が滲んでヒロくんの表情は見えないけど口調が優しくなったことでもう怒ってないことが分かる。
『…ヒロ……くん…ひくっ…ご、ごめん…なさいっ』
嘘をついていたこと、ヒロくんを怒らせてしまったこと、怒ってるヒロくんが怖かったこと、色んな感情が溢れてしまった。
「エマおいで」
わたしが泣いた時決まってヒロくんはわたしを抱きしめてくれる。
そして頭を撫でて落ち着かせてくれる。
トクントクンと規則正しい心臓の音と大きな手に安心して自然と涙が止まる。
その後ヒロくんは家に寄ることなくバイクに乗ってまたどこかへ行ってしまった。
───…この時のわたしたちを見ていた人が居たなんてこの時のわたしには知る由もないなかった。
