バレンタインチョコの告白



 オレは期待しすぎていたのだろうか。
 今日の亜麻にバレンタインチョコを渡すそぶりなんて見えない。


 いつも通りだ。

 オレは奢っていたのだろうか。
 今日、亜麻が義理でもチョコを渡してくれると。

 ちくしょう、そんな自分に腹が立つ。
 自分から行かなきゃ、何も変えられないじゃないか。

 だけど、もう少しだけチョコをくれるのを期待して待っているのもいいかもしれない。




 「すみません。伊藤先輩ですか、ちょっと渡したいものがあって」

 その時、オレが呼ばれた。
 周りの友達たちは、「ひゅーひゅー、まさかチョコかあ?」などと言って煽ってくる。


 でも、たとえそれが本当にチョコだったとしても関係ない。
 オレが欲しい、本命チョコは、亜麻のだけなんだから。