桜の雨 (ALTO RE・COD)

「わかった。明朝、タブレットを用意しておこう」

翌朝、Dr.北斗の研究室に行くと、アルト外出用タブレットを手渡された。

タブレットの画面越し、アルトが「おはよう」と呟いた。

「アルト、おはよう。晴れてよかった」

「何を浮かれているんだ」

アルトはぶっきらぼうに言った。

「花見をしよう」

「花見、桜?」

アルトは首を傾げながら訊ねた。

「そう、桜。今しか咲かないから」

「そういうのは、彼氏と見るものでは」

「はあ?」

こちらを見つめているアルトの真面目な顔がおかしくて、つい吹出してしまった。

「本にでも書いてあったの? わたしはアルトと花見がしたいの。アルトと桜を見たいの」

アルトの頬がほんのりと紅くなった。

研究センターの裏手まで、桜の説明をしながら歩いた。

「染井吉野というんだろ」

「そう、だけどねーー」