桜の雨 (ALTO RE・COD)

「そうですね。でも、人のことも周りの様子もよく観ています。モニターの中だけなのが惜しいです」

Dr.北斗は少し険しい顔をした。

Dr.北斗と育成の話をする時はニュータイプ研究室ではなく、Dr.北斗の研究室で話すようにしている。

新しく育て始めたアルトは、まだ自分が禁止AIだということは知らない。

知ってもらいたくないと思っている。

「どうかした?」

「いえ……」

前のアルトを思い出してとは、言えない。

今のアルトと前のアルトは別モノなのだから。

「Dr. アルトと花見がしたいんです」

「花見……ああ、桜か」

研究センターの裏手には、桜が数本植えてある。

毎年、春には美しく咲いて、圧巻だ。

1年に1度、今しか咲かない桜をアルトに見せてあげたかった。

というか、わたしがアルトと一緒に、桜を見たいと思っている。