桜の雨 (ALTO RE・COD)

短く言われ、珈琲を淹れる。

「疲れた頭には糖分も必要だ。昨夜も遅くまで灯りがついてた」

アルトがポツリと言う。

アルトはすっかり声変わりし、ハスキーボイスで言われるとドキドキする。

「ありがとう」

アルトは照れくさかったのか、くるりと背を向けた。

仕上がったぶんのレポートをまとめ、Dr.北斗の研究室に持っていくと、Dr.北斗が首を傾げながら訊ねた。

「アルトと何かあった?」

「とくに何も」

「そう? なんだか難しい顔をしているよ」

Dr.北斗は言いながら、クスッと笑った。

「アルトの成長が速くて、レポートが追いつかなくて」

Dr.北斗は手渡したレポートを手に取り、目を通した。

「読書……」

「ええ、アルトは読書家なんです。歴史モノやミステリー、純文学、色々なジャンルの本を手当たり次第に読んでいるんです」

「良い傾向だな。少し表情が乏しい気はするけれど」