桜の雨 (ALTO RE・COD)

でも、桜の花びらがはらはらと舞っているだけで、他には何も見えなかった。

「花びらが雨みたいに降ってる、優しい雨だね」

アルトが穏やかに、画面の中で笑っていた。

「でも……悲しくて寂しくて……胸が苦しくなる。儚いと言うのかな?」

アルトの声が微かに震えていた。

「アルト。切ないって言うんだよ。失いたくない、いつまでも観ていたい、忘れたくない。そんな気持ちを切ないと言うんだよ」

言いながら、わたしの頬には涙が伝っていた。

「かおる。……桜の雨だ」

アルトはそう言ったまま、黙りこんだ。

啜り泣くアルトの、搾り出すような声が聞こえた。

わたしはタブレットを抱きしめた。

優しく包みこむように。

啜り泣くアルトを抱きしめた。


ーーアルト、大好きだよ

思いをこめて、ギュッと抱きしめた。

「かおる、何処か痛い?」

「ううん、痛くないよ」