桜の雨 (ALTO RE・COD)

タブレットの画面を桜に向けると、アルトが「スゴい」ため息混じりに言った。

風に煽られ、花びらが舞っている。

はらはらと、止まることなく、静かに。

風の音しかしない。

花びらは、一方向ではく、右に左に斜めに、不規則に舞っていた。

ため息しか出ない、言葉にできない。

ーー世の中に絶えて桜のなかりせば……

和歌を思い出した。

「かおる。世の中に絶えて桜の、在原業平はどんな気持ちで、この和歌を詠んだんだろう」

アルトが訊ねてきた。

「そうだね。ずっと桜を観ていたかったんだろうね」

「散っていくよ、かおる。音もなく、散っていく」

「うん。綺麗だけでは言い表せないね」

散った花びらが地面の上に落ちる様子までが、絵のようだ。

川面だったら散った花びらが、花いかだみたいに見えるのになと、思い浮かべた。