桜の雨 (ALTO RE・COD)

「ヘェ~、そんなに綺麗なんだ」

「うん、昼間に観るのとは全然ちがうかも」

わたしは言いながらスマホを操作し、昨年撮った画像を見せた。

真っ暗な夜に浮かび上がる桜の木の画像は、よく撮れているなと、自分でも思える自信作だ。

「どう?」

「ライトアップしてるの?」

「ううん、してないよ。加工もしてない」

アルトは画像をまじまじと見つめた。

「想像以上だね。桜の木というより、桜の精みたいだ」

キラキラと目を輝かせている。

「生で見たら、もっとスゴいんだよ」

そういうと、「信じられない」とため息をついた。

「夜が楽しみだ」

わたしがスマホの画像を閉じようとすると、「もう少し」と言って、暫く画像を眺めていた。

「世の中に絶えて桜のなかりせば……か。和歌の意味がなんとなく、解った気がするよ」

アルトはポツリと言って、微かに笑った。