桜の雨 (ALTO RE・COD)

「ありがとうございます」

「今日は研究室で徹夜になりそうだから、いつでも取りにきなさい」

「はい、あの何か手伝えることはありますか?」

「いやーーとくには」

「そうですか、では」

何か手伝えることはありますか、と聞いた時のDr.北斗の表情が少し気になった。

眉間に皺を寄せた顔は迷惑そうで、不機嫌そうな声だった。

何だったんだろう、あの感じはと思いながら、ニュータイプ研究室に戻った。

「かおる、難しい顔だな」

アルトが心配そうに、こちらを見つめた。

「そう? 今夜は風が強くなりそうと聞いたからかな」

なんでもない風を装い、答える。

「アルト、夜桜もスゴく綺麗なんだよ」

「『夜桜を振り返って見上げると、化かされる』って、かおる知ってる?」

「夜桜を見ると化かされる!? んーーよくわからないけれど、幻想的だから会えない人の姿にでも見えるのかな」