桜の雨 (ALTO RE・COD)

忘れていいはずがない。

忘れられるはずがない。

いや、忘れたりしない。

数日後。

朝から風が吹いていた。

花曇りというのだろうか。

アルトと満開の桜を見た日とはうって変わり、どんよりした空の色だった。

窓を開けると冷たい風が吹きこみ、肌寒むかった。

研究センターの裏手にある、桜の様子が気になった。

確かめ行こうと、ニュータイプ研究室を出ようとすると、アルトが声をかけてきた。

「かおる、どこに行くんだ?」

「桜を、桜が散り始めていないか見てこようと思って」

返事をして、ニュータイプ研究室を出た。

アルトの声が微かに聞こえた気がしたけれど、わたしは振り返えらなかった。

桜の花びらが風で少し舞っていた。

ーーまだ、大丈夫

思いながら、スマホで写真を撮った。

ニュータイプ研究室に戻る途中、廊下でDr.北斗に会った。

「今晩から明日にかけて、風が強くなるようだ。タブレットの準備はできているよ」