大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 触れた唇はやわらかく、心なしかひんやりした。
 十二月の空の冷たさ。だが最初からこうするのが自然だったと思えるほど、すんなりとなじんでいく。
 あ、と思うまもなく朋也が離れ、また唇が合わさった。さっきより強く、切なげに求められる。

「は……」

 合わさっては離れ、また合わさる合間に、吐息が零れてまじり合った。体温が上がる。

(酔いそう……)

 何度キスしたのかもわからない。目が潤んだのも気づかずに朋也を見あげると、また深く抱きしめられた。
 心臓が今にも飛び出そうだ。
 いたたまれなくて、一刻も早く逃げ出したくなる。その一方で、ずっとこうしていたいとも思う。
 どこもかしこもふわふわして、抱きしめられていなければ、その場に崩れ落ちてしまいそうだった。

「……まずい、フライトの足枷になったかもしれない」
「えっ!?」
「美空がかわいすぎるせいで、戻りたくなくなったんだけど。どうしたものかな」
「早く行ってください!」

 悲鳴じみた声で朋也から離れると、朋也がひどく嬉しそうに笑った。


 
 よもや、自分がパイロットに恋をするなんて思わなかった。
 そう――恋。
 自覚すると、なんだか走り出したいような、叫び出したいような、手に負えない気分に陥ってしまう。
 自分の中にこんな感情があったことに、驚いてしまう。
 だが、美空のなかのもっとも正直な気持ちは「信じられない」だった。
 ましてや朋也にも恋をされている――なんて、日が経つごとに現実味が薄れていくばかりだ。あのあと朋也がすぐウィーンに飛んだから、よけいにそう思うのかもしれない。