大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 どういう意味なのか追及したいのに、言葉がもつれて出てこない。なにか言おうとして、絡まって、口を閉じる。その繰り返しだ。
 朋也の背を押す手も、いつのまにか止まっていた。その一瞬の隙を突くかのように、朋也がふり向いて美空の腕をつかむ。

「瀧上さんが美空の恋人じゃなかったと知って、抑えが利かなくなったんだった。今ならまだ間に合うと、とっさに判断したのもある」
「ま、間に合う?」
「そう、よその男に取られる前にね。美空を……めちゃくちゃ、ほしいって思った」

 ほとんど真上から覆い被さるようにして、朋也に見つめられる。つかまれた両手がじわじわと熱を帯びていく。
 顔も首筋も、耳も、手をつけられないほど熱い。動揺のままに返した言葉は調子はずれに響いた。

「そ、そんなの……まるでおもちゃをほしがる子どもじゃないですか」
「子どもは駄々をこねるだけだけど、パイロットは目的へのアプローチ方法を戦略的に構築する。そして、機を逃さず一気に動くものだよ」

 ぎょっとして身を引こうとしたら、逆にその腕を引き寄せられた。
 今にも抱きしめられそうだ。
 喉を鳴らした朋也の目に、捕食者めいた光がちらついている。心臓が否応なしに騒ぎだした。
 勝手に膨らんでいく甘い予感と、自分だけの勘違いかもしれないという一抹の不安がせめぎ合う。
 自分は、また風邪を引いているのかもしれない。熱があるのはそのせいかもしれない。……でも。

「つ、つまり……? 言い換えると、沖形さんはわたしといても……不快じゃないということ……?」
「不快な相手に、キスする状況が理解できないな。キスは、したい相手とするものじゃない? ただ、弱って逃げられない美空につけこむ形になったと、反省はしたけど」

 危うく変な声が出そうになり、美空は唇を引きしめる。マスク越しだったのに、朋也の感触がまざまざとよみがえった。