大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

「おう。体調は……その、どうだ?」

 珍しく瀧上とも視線が合わない。

「もうすっかり元気です、ご迷惑をおかけしてすみませんでした。ところでなにかあったんですか? なにかいつもと違うような……」
「沖形から聞いていないのか?」

 なぜ朋也が出てくるのだろう。きょとんとすると、瀧上が苦々しそうにため息をついた。

「木崎が休んだ日、連絡を取りたいと言って殴りこみに来たんだよ」

 思い出した。朋也は、美空の病欠を瀧上から聞いたと言っていた。
 しかしそれと『殴りこみ』の言葉が、しっくりこない。

「あとは本人に聞け。……行ったんだろ、おまえんち」
「あ……はい」

 それ以上は説明しづらくて口ごもると、瀧上が「ま、そういうことだ」と話を締める。美空も頭を切り替えた。
 まもなく朝のラッシュが始まる。人手の足りない時期に休ませてもらったのだから、きっちり働かないと。
 大忙しで午前の業務を終え、午後二時になってようやく昼休憩に出た美空は、社員食堂の前でショートボブが溌剌とした印象の女性社員に捕まった。
 朋也の乗務予定を教えてくれた、ダイヤ管理の同僚だ。美空の一年後輩で、橋丘(はしおか)と名乗られた記憶がある。

「木崎さんも、これからお昼ですか? ご一緒させてください」

 本社ビル十階にある社員食堂は、明るくナチュラルな雰囲気の居心地のよい空間だ。
 パーテーション代わりに飾られた背の高い観葉植物は内装のアクセントになっており、夕方は大きく取られた窓から夕陽に照らされた街並みを眺めることもできる。
 料理のレベルが高いのも好評だ。
 美空は生姜焼き定食を、橋丘はサーモンとほうれん草のクリームパスタを頼む。パスタは、国際線の機内食とおなじメニューらしい。粋な試みに感心する。
 美空は昼食を休憩室ですませるほうが多いのだが、橋丘はよく食堂を利用するのだという。
 二時ともなればひともまばらで、美空たちは窓際のカウンター席に座った。

「この前は、乗務予定を教えてくれてありがとうございました」
「いえいえ。あ、木崎さんは先輩ですし、タメ口でどうぞ! それより気になってしかたなかったんですけどぉ……木崎さんって、沖形さんとはどういうご関係で?」