大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

「わかったらおとなしく寝ること。着替えを取りにいったん戻るけど、また来るから。ほしいものはある? ついでになにか買ってくるよ」
「や、それは――」

 抗議しかけた美空の肩がやんわりと押され、ベッドに引き戻された。
 朋也の顔が覆い被さるように近づいてくる。

「こんなときまで頑なになるのはやめてね。次から罰則がつくよ。素直に、俺に甘えてみて」

 怒った表情と裏腹に、その声は頭の芯が痺れそうなほど甘かった。


 
 ドアが閉まる音がして部屋がしんとすると、美空はパニックになった。

(沖形さん、また来るって言った!? どうして!? それより、わたし汗臭くなかった……!? 部屋だって散らかってたよね……!?)

 シャワーを浴びないと。くたびれていない部屋着に着替えよう。出しっぱなしにしていたダイニングのコップも片付けなきゃ。とにかく朋也にこんなところは見せられない。
 しかしやらなければならないことが浮かぶそばから、頭が重くなっていく。美空はとうとう睡魔に引きずりこまれていった。
 気が張っていたのか、それとも疲れが溜まっていたのか。
 朋也がいつ戻ってきたのかも、自分がふたたびドアを開けた記憶もあやふやだ。ただただ眠り続けた美空が目を覚ましたのは、その日の午後になってからだった。

「あれ……わたし、また寝てた……」

 起きあがり、サイドテーブルの置き時計を見る。午後一時四十分。
 寝過ぎたことにうろたえたが、おかげで頭もだいぶすっきりしている。全身の怠さも消えたようだ。喉の痛みもいくらかましになっている。
 そういえば明け方、朋也が水を飲ませてくれたと思い出していると、朋也が入ってきた。

「おはよう。気分はどう?」
「沖形さん……だいぶ、よくなりました。すみません、瀧上さんも人使いが荒いですね。沖形さんにこんなことを頼むなんて」