大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 その予感は、すぐに裏付けられた。

「……彼女の先輩として言っています。君のおかげで、彼女は惑わされてばかりだ。業務に集中させてやってください」

 そうだったのか。
 肩から力が抜けていく。見当違いで美空を問いつめたのを後悔した。しかしそうであれば、ここからは下手に出る必要もない。

「木崎さんが俺に直接そう言うなら、考えます。木崎さんは?」
「自分が彼女に迷惑がられている可能性を考える気はないのか?」
「それをたしかめるために連絡を取るんでしょう。それとも、そんなに俺が彼女に近づくのが脅威ですか?」
「なっ……! 俺はただ、木崎のことを考えて言ってる!」
「ああ、彼女の前ではいい先輩でいたいんですね。俺は、いい子ぶる気はありませんよ。彼女がほしいですから」

 瀧上が絶句し、フロア内が水を打ったように静まりかえる。
 だが、朋也は瀧上だけを見ていた。

「俺は、彼女が迂回しろというなら迂回します。空中待機しろというなら待機します。だが、指示系統は一本でなければ現場が混乱する――そうでしょう? 俺は、彼女のフライトプランに従う」

 第三者の存在など、関係なかった。誰が美空の周りにいようと、これは美空と朋也の問題だ。
 これまで、自分から誰かを求めたことなどない。この先も二度とない自信があった。――彼女のほかには。
 腹の底が、衝動で熱く煮える。それも初めてだった。
 長い長いにらみ合いの最後に、瀧上がとうとう目を逸らす。
 顔を背けられていても、深い息をついた気配は伝わった。

「………………木崎は、病欠だ。風邪をこじらせてる」

 風邪。だから連絡できなかったのか。
 だとしたら美空をひとりにしておけない。「失礼します」と朋也はオペセンを飛び出した。