大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

 あれから一週間、朋也からの連絡はいっさいない。
 もう連絡しないでと言い放ったのだから、当然といえば当然だ。

(それに、わたしがああ言わなくても……前とはぜんぜん違う優しい笑顔を、あの女性に向けていたもの。そっちに忙しいに違いないよね)

 思い返すと、胸がふたたび波立った。
 やっぱり朋也は、美空にとって地雷めいたものを持っているのだ。
 しかしもう、ふいに呼び出されることもない。メッセージを送りつけておいて、返信を強要されることもない。
 関わらずにすむようになって、心が平穏を取り戻してもよいはずだった。

(なのにどうして、こんなに気分が沈むの?)

 あのときの朋也の表情が、頭にこびりついて離れない。
 美空の言葉に表情を消す前の朋也が一瞬だけ見せた、なんともいえない顔。あれは、今思えばどこか傷ついたふうだった。

(落ち着いて考えれば……沖形さんの『見せたいもの』が、綺麗な女性とのツーショットだったなんて、穿った見方かも)

 朋也の見せたかったものが別だとすれば、美空はひどく自分勝手な振る舞いをしたことになる。
 だいたい、会社の同僚が別の同僚と親しくする場面を見ただけだ。なぜあれほど攻撃的になってしまったのだろう。
 いずれにせよ時間を置いて考えると、美空のほうがやりすぎだった気がしてならない。

「わたしって最低……」
「この前はやる気に満ちていたのに、今日は自己否定が激しいな」

 美空が休憩室のベンチでうなだれていると、あとから来た瀧上が苦笑した。
 自販機で買ったホットレモネードを渡され、美空は礼を言って受け取る。
 両手で包むように持てばぬくもりが手にしみこんできて、思わずつぶやきが漏れた。

「自分ではもういい大人のつもりだったんですけど、わがままで子どもじみた発言をしてしまい……反省中でした」
「木崎がわがまま? 想像がつかないな」

 瀧上が自分の分のコーヒーを買い、美空の隣に腰かけた。

「自分でも、自分がこんなだとは思いませんでした。感情が……抑えきれなくて」