大嫌いなパイロットとのお見合いはお断りしたはずですが

「わたしのことをあれこれつついて……そんなに楽しいですか? 沖形さんは最初から、わたしのことを物珍しいものを見る目で見てましたよね。わたしはそれが、ずっと不快でした。たしかにわたしは、沖形さんが親しくする女性とはタイプが違うかもしれません。でも、だからってあなたの気まぐれに付き合わされたくありません」
「それは……珍しいと思ったのは、認める。それが気に障ったなら、それも謝る。けどこれだけははっきり言うけど、気まぐれなんかじゃない」

 美空は怯みかけたものの、テーブルの下でぎゅっと拳を握りこんだ。そうしないと今すぐにでも叫んでしまいそうだった。

(じゃあ、呼び出したわたしの目の前でほかの女性と約束した、あれはいったいなんなの……!)

「とにかくわたしは、あなたのペースに振り回されるのは嫌です。もうわたしに連絡しないでください」

 言葉を選ぶ余裕もなく、美空は口走った。
 気まずい沈黙が降りる。
 美空は奥歯を噛みしめ、うつむく。
 朋也が「それ」と美空のカフェオレカップを指さしたのは、美空の動揺がようやく少し落ち着いてきたときだった。

「……まだ残ってるよね。せっかくだから、ゆっくりしていって。ただ、できればあの男をここに呼び出すのは勘弁して」

 とっさに反応できない美空の前で、朋也は残りのコーヒーを飲み干して伝票をつかんだ。

「じゃあ、俺は次のフライトがあるから先に出るよ。お疲れ」

 朋也は淡々と言うと、コートの裾を翻して去っていった。
 彼の姿が見えなくなるまで、美空はなにも言えなかった。